相続した土地活用、売るか、大東建託で賃貸経営するか相談を受けたので考察しました。
売却か賃貸経営か?最善の選択はどちらでしょうか?
大阪市内 土地200坪
大東建託提案①
木造 2×4工法 居住用12戸+駐車場3台
間取り2LDK 約58㎡
一括借り上げサブリース賃料(約10%の手数料を引かれた金額)
1戸/あたり 賃料 約80,000円 駐車場1台13,000円
1ヵ月の家賃収入 999,000円
消費税込みの 建物価格 1億7000万円で試算
大東建託は木造35年で借入を提案
りそな銀行
変動金利 5年目まで0.85% 6年目から20年目まで1.5% 21年目以降3.1%
返済シミュレーション
1億7000万円借入 金利はわかりやすく1%で計算
月々返済額479,885円 年間返済額5,758,620円
月の家賃収入999,000円
999,000円‐479,885円=519,115円も手残り
毎月の家賃収入から返済をしても約52万円残る!!
約52万円×12か月で年間 624万円の収入!!!
年間624万円×10年で6240万円!!!!
サブリースで家賃10年間固定!安定収入!!!
すばらしい!????
土地建物合わせて考えないといけません。
上記の計算は建物代金のみのシミュレーションになります。
建物1億7000万円のみで利回り計算すると
1ヵ月家賃収入999,000円×12か月
= 年間サブリース家賃収入11,988,000円
表面利回り
11,988,000円÷1億7000万円×100= 7.05%
坪75万円として、約200坪 土地価格 1億5000万円
建物価格 1億7000万円
土地建物合わせて 合計3億2000万円
表面利回り
11,988,000円÷3億2000万円×100= 3.74%
諸費用、火災保険、税金、ランニングコストは考慮していないので
実際の利回り、手残りはもっと低くなってしまいます。
これだけの資金を投下して、経費と税引き後の収支を考えると恐ろしいです。
木造法定耐用年数は22年
最近は木造でも35年ローンが可能になってきています。
1億7000万円35年返済で借入をした場合、10年後の残債は約1億2700万円
10年後いくらで売れる?
- 年間収入11,988,000円 築10年木造 利回り3.74% 3.2億円?
- 年間収入11,988,000円 築10年木造 利回り5% 約2.4億円?
- 年間収入11,988,000円 築10年木造 利回り6% 約2億円?
- 年間収入11,988,000円 築10年木造 利回り7% 約1.7億円?
諸費用度外視で手残りを計算
- 3.2億円で売却出来た場合、3.2億‐残債12700万円=193,000,000円
- 2.4億円で売却出来た場合、2.4億‐残債12700万円=1億1300万円
- 2億円で売却出来た場合、2億‐残債12700万円=7300万円
- 1.7億円で売却出来た場合、1.7億‐残債12700万円=4300万円
売却後手残りと10年間のキャッシュフロー6240万円で、やっぱりいい話なのか!
不労所得!もしかしたらいいのかもしれない・・・!?
営業担当の話でも、長期で家賃が下がっていくシミュレーションを出してくれている。
もう少し安全に賃貸経営をするために、退職金と貯金を頭金に入れて借入を少なくすれば、もっと安定した経営が出来るのでは!サブリース一括借り上げで、空室の心配もない、リスクはなにもないじゃないか!って考えているのかもしれません。
でも実際は、上記の計算も成り立たない可能性が高いです。
新築木造住宅に対しては、35年返済の期間がとれるけれど、中古住宅に対しては木造の法定耐用年数22年でしか融資が受けることが出来ません。
【残存年数12年木造物件】
金融機関の融資が長く取れて15年組めたとして金利1%で計算
年間家賃収入11,988,000円 月々家賃収入999,000円
- 物件価格3億円 月々返済1,795,483円
- 物件価格2.4億 月々返済1,436,386円
- 物件価格2億 月々返済1,196,989円
- 物件価格1.7億 月々返済1,017,440円
- 物件価格1.5億円 月々返済897,741円
10年後売却する場合、月々家賃収入999,000円の投資価値は1.5憶で税金、火災保険、メンテナンス費用等、ランニングコストを考えると1.5億円で購入した人は購入した時点で毎月の赤字経営が確定します。
土地建物合わせて1.5億円でも売れない可能性があります。
表面利回り 年間家賃収入11,988,000円÷1.5憶円×100=7.99%
1.5億にしかならない場合、残債12700万円を引いて、残り2300万円 と10年間の家賃収入キャッシュフロー6240万円、税金、火災保険、メンテナンス費用、ランニングコスト、売却の仲介手数料等を引くと、土地だけであれば1億5000万円程度で売れていたのに、借金をして資産価値を下げてしまう。計画の甘さで、事業として失敗してしまう。
不動産の売却相談で、よくある話です。中には抵当権の抹消、売却金額より借入の方が多い為、売るためにお金を工面しないといけない方もいます。
賃貸経営をするとすれば、大東建託、ダイワハウスより建築単価が安くなる工務店はないのか探すことや、コンサルタントに頼んで、土地のポテンシャルを最大限引き出す為には、どの間取りが適正で、最大何戸数のマンション、アパートがいいか、何が最善か計画をすることが大切です。
かぼちゃの馬車やスマートデイズなどのシェアハウス投資でも、空室保証、サブリース契約などという言葉に、安心させられて、高い建築費、高い管理費を払って、相場より安い賃料で借り上げられていることも気が付かない。
次の世代、子供に残そうと安易に建てた建物の為に、土地の価値を下げてしまい何も残せない可能性もあります。
お金のことを気にしなければ自分の持ち物なので何をしようが自由だけれど、土地活用をして新しい事業にチャレンジするのであれば、賃貸アパート経営ではなく、もっと面白い観光スポットになるような飲食店誘致するとか、料亭つくるとか、土地、地域の可能性も模索してほしいと思う。
賃貸経営は楽しいし、色々勉強にもなる、是非チャレンジしてもらいたいと思うけれど、まったくの初心者が新築の建築から始めるのはハードルが高い気がする。
先祖代々の土地を残したいからと理由なのに、アパート、マンション経営で少しの小遣いが欲しいなど、甘い計画で失敗している人は多い。
アパート、マンションの賃貸経営を始めるのであれば、まず中古で身の丈に合った物件から始めるのがいいと思う。相続した土地の地域は、どんな間取りが人気で、人口動態はこれからどうなって、出口戦略など考えるのは、売却してプロに任せて、市場に売りに出ている収益不動産を購入する方が、失敗する可能性は低い気がする。
大東建託で賃貸経営するか、相続した不動産を売却するか、相談を受けて、こういう内容を説明しました。
それでもすぐには、大東建託の賃貸計画を捨てることが出来なくて悩んでいらっしゃいました。
一括借り上げサブリースについての説明
最後に建築を諦めたダメ押しは、一括借り上げサブリースについての説明でした。
家賃の減額請求は「更新のたび」ではありません。相手が下げたいと思ったときに家賃交渉が入ります。もし、それを断ったら、最悪「一括借り上げ」契約の解約ということにもありえます。契約書に「家賃は10年間固定」なんて書いてあっても無意味な規定ということです。借地借家法の「契約の条件にかかわらず・・・」というところに注意です。
サブリースでは、サブリース会社は大家さんに対しては借地借家法上の「借主」になります。最高裁「サブリース訴訟」で、家賃保証を行う業者は、そこに住んでいる一般住民と同じ権利を持つと認定されました。つまり家賃保証契約は普通借家法に当たるわけです。
これは業者がいつでも家賃保証契約を解除できる、いつでも家賃を下げることができることを意味します。契約して何年かすると、業者から家賃引き下げの要求が必ずあります。
最終的には売却することになり、売却したお金で6戸数の1棟アパートを購入して、残りのお金は保険と投資信託、金融資産にされました。
やったことのない賃貸経営で、うまくいくがどうかわからないのに、何億円と借り入れをして、銀行が貸してくれるのは事業計画がしっかりしているからと考えたり、サブリース一括借り上げで10年間は固定だからと、甘い言葉に惑わされる。
担保のないきれいな土地、相続対策で建物を建てたいなんて案件、銀行は大好きです。
今回の問題は、大東建託だからとか関係なく、土地の所有者が庭を残したいという思いが、土地200坪に12戸数のみで賃貸経営をするという、収益を生みたいのか、庭を誰のために残したいのか、賃貸人のために?庭の管理費もかかるのに、12戸数の建物を建てた時点で、資産価値が下がってしまう事を、色々な角度から検証して伝えることが出来たので、理解いただけました。
何が最善なのか、入念なシミュレーションが大切です。